UGC利用と著作権の問題
利用規約に盛り込むべき内容や炎上事例を解説
UGCとは User Generated Content を略したもので、ユーザー生成コンテンツと訳されます。消費者が生み出したコンテンツの総称で、企業が発信したものは含まれません。SNSやメディアに投稿されたテキストや写真、動画などのコンテンツ、ECサイトのレビューなどが代表的なUGCです。
UGCが作られるようになったのは、携帯端末の機能が発達し、インターネットが急速に普及した2000年頃からだとされています。また、映像ソフトの発達によって、誰もが気軽に写真や動画、音楽などを制作・発信できるようになったことも影響しています。
UGCにも著作権がある
一般ユーザーが作成したUGCは著作物にあたり、著作権は作成したユーザーが保有しています。著作物や著作物とは、どのようなものか確認しましょう。
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著作物とは?
自分の考えや気持ちについて、文字や写真、絵画などで創作的に表現したものが著作物です(著作権法第 2 条第 1 項第 1 号、以下同法とします)。単なるデータや、他人の作品の模倣などは著作物に該当しません。小説など言語による著作物のほか、音楽・美術・地図・建築・映画・写真・コンピュータプログラムなどが代表的な例です(同法第 10 条)。なお、著作物に上手・下手は無関係で、創作的に表現されている作品は幼児が作成したものでも著作物にあたります。
また、著作物をもとに翻訳、編曲などを行なった二次的著作物も、もとの著作物とは別に保護されます(同法第 2 条第 1 項第 11 号、第 11 条)。ただし、二次的著作物を制作する場合は、原著作者から許可をもらわなければなりません(同法第 28 条)。
百科事典や新聞などは項目ごとに著作権がありますが、掲載する内容や順番を決める編集作業も創作的な活動としてとらえられるため、全体でも編集著作物とされています(同法第 12 条)。その他、検索で発見できる編集著作物は、データベース上にある著作物とみなされ保護されます(同法第 12 条の 2)。
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著作権とは?
著作権とは、著作物を創作した時点で著作者に自動的に発生し、著作物を独占的に利用できる権利です(同法第 17 条)。著作権には、大きく分けて以下の 2 種類があります。
- 著作者の人格を保護する「著作者人格権」
- 著作権者が著作物の利用を許可して使用料を受け取れる「著作権(財産権)」
著作者人格権には、以下のようなものがあります。
公表権(同法第18条) 著作物をどのように公表するか、またそもそも公表するのかどうかを決める権利 氏名表示権(同法第19条) 著作物に表示する氏名をペンネーム・本名のどちらにするのか、またそもそも氏名を表示するのかどうかを決める権利 同一性保持権(同法第20条) 著作物の内容およびタイトルなどを、著作者の許可なく他者に変えられない権利 また著作権(財産権)には、以下のようなものがあります。
複製権(同法第21条) 著作物を印刷、写真、複写、録画などの方法で再製する権利 公衆送信権(同法第23条第1項) 公衆からアクセスがあれば著作物を自動的に送信する権利 公の伝達権(同法第23条第2項) 公衆送信された著作物を受信装置で公に伝達する権利
(例:プレゼンテーションで Web サイトの記事を表示して見せるなど)譲渡権(同法第26条) 映画以外の著作物の原作、または複製物を譲渡する権 翻訳権・翻案権など(同法第27条) 著作物を翻訳、編曲、翻案などする権 二次的著作物の利用権(同法第28条) 二次的著作物の原著作者が、二次的著作物の著作者と同一の権利を有する権利 UGC はユーザーが著作権を保有し、原則として運営事業者には著作権がないため、自社サイトに投稿された UGC であっても、企業が無断で利用することはできません。UGC を利用する際は、利用規約に著作権に関する条項を盛り込む必要があります。
UGCの著作権にまつわる炎上事例
UGC著作権の範囲の設定が問題になり、炎上した事例を紹介します。某アパレル企業が2014年に、スマートフォンやタブレットでオリジナルTシャツを作成できるというサービスを行ないました。専用アプリで絵や文字、写真を入力してデザインするもので、オリジナルTシャツが1枚から購入できると注目を集めます。
ところがこのサービスの利用規約は、「すべての著作権を企業へ無償譲渡する」「著作者人格権も行使できない」という内容になっていました。あまりに一方的な内容だったため、「自分のオリジナルイラストが、Tシャツを作ったあとは、自分のものではなくなってしまう」「著作権をすべて失ううえに人格権も行使できないから、企業が量産・改変し放題」と懸念の声があがり炎上します。
その結果、某企業は利用規約を再検討し、ユーザーが投稿したデザインの著作権すは、ユーザーに帰属すると変更しました。
UGCの利用規約・ガイドラインに盛り込むべき内容
UGCを正しく利用するために、利用規約やガイドラインに書くべき条項を説明します。炎上を防止するために、内容や表現方法に気を付けましょう。
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著作権の譲渡またはライセンス契約について
事業者がUGCを利用する方法は、大きく分けて「著作権を譲渡してもらう(同法第61条)」「著作権をライセンス契約する(同法第63条)」 2つがあります。
「著作権の譲渡」は著作権を手放すことです。著作権者はその著作物を利用できなくなり、事業者は譲り受けたコンテンツを自由に利用できるほか、第三者への販売も可能です。
「ライセンス契約」は、他者に著作物の利用を承諾することです。ライセンス契約の場合、著作権はユーザーに残ったままで、事業者は利用条件の範囲内でUGCを利用できます。
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対象となる著作権の範囲について
先ほども説明したように、著作権には複製権や譲渡権などのさまざまな権利が存在します。譲渡やライセンス契約の対象をすべての著作権にせず、必要な範囲に限定することも可能です。
事業者の立場からすれば、できるだけ多くの著作権を譲ってもらうほうが有利でしょう。しかし、ユーザー目線からも妥当な条項なのか判断しないと、炎上するリスクがあります。そのため、譲渡またはライセンス契約する著作権について、利用規約で妥当な範囲に
しておくことが大切です。 -
有償または無償について
著作権を譲渡してもらう場合も、ライセンス契約をする場合も、有償なのかそうではないのかを明らかにしておく必要があります。著作権を譲渡してもらう場合は、ユーザーは著作物を使えなくなってしまうため、有償とするケースが多く見られます。
一方で、一部の著作権のみを利用する場合はライセンス契約にして、無償利用にする場合がほとんどです。無償利用の場合は、一般ユーザーに誤解を招かないような、わかりやすくやわらかい表現にする配慮が必要でしょう。
UGCを利用する際のユーザーへの許可の取り方
利用規約を作成して準備ができたら、ユーザーへ UGC 使用の許可を取りましょう。ここでは、具体的な許可の取り方を説明します。
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SNS投稿の場合
UGCがSNS投稿の場合は、投稿者へダイレクトメッセージを送って許可を得ます。利用したいUGCのコメント欄に記入して、ユーザーに確認してもよいでしょう。メッセージ送信の際は、利用規約も併せて提示すると安心です。
ただし、投稿したユーザーがモニターであるなど、事前に二次活用の了承を得ている場合は、必ずしも許可を得る必要はありません。事前に使用許可を示す専用のハッシュタグを作成し、そのタグを付けた投稿は「使用許可を得たものとする」という規約を表示して、
使用許可の省略も可能です。 -
ECサイトレビューの場合
ECサイトレビューの場合は、レビュー依頼メールを送る際に利用規約を提示して、レビュー投稿と同時に利用規約に同意してもらえるようにしましょう。レビュー書き込み欄のわかりやすい場所に規約を掲示しておけば、規約内容に許可を得たことになります。画面の端に小さく表示されて認識しにくい場合は、ユーザーが規約を認識し許可を得たと認められないため注意しましょう。
確実に許可を得るには、チェックボックスや「同意して書き込む」バナーをクリックさせる方法がおすすめですが、レビュー数が減る可能性もあります。
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UGC活用ツールを使うのもおすすめ
複数のユーザーに個別にダイレクトメッセージを送信して、許諾管理を行なうのは運用事業者の負担が大きいのではないでしょうか。利用したいUGCが多くある場合は、UGCの収集や許諾管理などが一括でできるUGC活用ツールを使うと、効率良く作業が進められるためおすすめです。UGCツールを使うと、さまざまな自社チャネルに簡単にUGCを掲載できるため、結果として広告費や運用費を削減できます。
まとめ
UGCはユーザーによって生成されたコンテンツで、著作権はユーザーにあるため、企業が利用したい場合には著作者から許可を取らなければなりません。許可を取るためには、あらかじめ利用規約などを定めておく必要があります。
UGCの利用に際して炎上する事例の多くは、UGCの著作権が誰に帰属するかが原因で発生します。運用事業者はUGCをどのように扱うか十分に検討して、利用規約を定めることが必要です。投稿者はあくまで一般ユーザーであることを考慮し、丁寧かつわかりやすい表現で規約を作成するなどして、炎上リスクを軽減させましょう。