巨大小売企業の代表格であるAmazonは、サプライ・コスト・デリバリーでEC市場を席巻し、近年時価総額は1兆ドルに到達しました。Amazonでは、実質何でも安く楽に買うことができ、「Amazonで買った方が、コスパがいい」と認知されているほどです。今後も価格競争力を高め、配送スピードを上げ、さらなる成長を遂げていくでしょう。
しかし、Amazonから洗顔フォームを買えば、手ごろで楽に手に入るかもしれませんが、商品販売設計が大衆向けとなっている分、アメリカのD2CコスメブランドGlossierから最新の洗顔フォームを買ったときの高揚感を味わうことはできません。そこにはブランドとの繋がりがなく、心の奥底にあるロイヤリティーはないからです。
一方、D2Cブランドは、顧客一人一人のニーズに合わせることが可能です。これは、マーケティングから生産、商品受注、入金管理に至る全ての機能をコントロールすることができるからです。そのため、商品購入に至る一連の過程で、顧客の実用的なニーズよりもっと深く複雑なニーズを掴み、顧客との繋がりを強くできるのです。
例えば、アメリカのD2CアパレルブランドのChubbiesでは、商品からマイクロコピー、実店舗に至る全てが特定の“若者男子”層に向けて設計されています。
顧客からのフィードバックを常に把握しており、ターゲット層のニーズを反映した意思決定をすることで、顧客との強い結びつきを実現しています。こういった顧客との直接的な関係を築くことは、第三者の小売業者やオンライン市場を介して商品販売するやり方では、ほとんど不可能です。
Eコマースの新しい時代において、企業は、思い切って商品をコモディティ化するか、生き残るようなブランドをつくるかのどちらかを選択しなければならないでしょう。
こういったEC業界の二極化の背景には、顧客の期待の変化があります。より多くのD2Cブランドが競争に参入する中で、今日の顧客は、実用品以外の買い物をするときには、“自分向けの顧客体験”を期待するようになっています。
自分に合った商品設計やECサイトのコンテンツで“自分だけのため”と感じられ、心が引かれるような顧客体験を求めているのです。
そういった中、D2Cブランドは業界全体で顧客体験の水準を高めました。単にズボンを売るだけでなく、顧客がECサイトを再訪するようなオンライン体験を提供し、顧客独自のコミュニティーやライフスタイルを持つようなコンテンツを作っているのです。
顧客のロイヤリティーを高める際には、D2Cブランドは巨大小売企業よりも有利です。それは、サプライチェーンをコントロールすることで、顧客の好みや要望を反映させ、すぐに修正することができるからです。このような真の繋がりはAmazon上で再現することは難しいのです。
Lesson2以降の章にもあるように、D2Cブランドの成長のカギは、顧客体験を通じて顧客と“1対1の関係”を築くことにあります。
その際、ブランドのミッション、ストーリー、社会貢献活動への信念、価格決定哲学、商品購入プロセスなどブランドの目に見えない魅力が重要になります。このような数多くの要素を上手く活用することで、たとえ小さなD2Cブランドでも、新しいEコマースの世界で太刀打ちできるのです。
それでは、具体的にD2Cブランドはどのようにして、この目に見えない魅力を伝えればよいのでしょうか?Lesson2では、ブランドの目に見えない魅力を伝えるための、ペルソナ設定、顧客へのアプローチの仕方、コンテンツの提供について見ていきます。
※本記事は、「The Phenomenal Ascent of Direct-to-Consumer Brands | Yotpo」の翻訳・加筆しています。